タイトルのみを見て、手に取った本です。
それまで眉村さんの本を読んだ事はありませんが、作家として
死期の迫る奥さまに出来る事を模索し、1日1話という形をとり
ながら、結果として5年間の長きにわたり実践した、病気の奥さま
に向けて作品を書くと言う心の温まる内容です。
タイトルだけを見るといかにもこの本の中に1778話もの短編が
詰まっていると錯覚しそうですが、本書に収められているのは、
その中から眉村さんが選んだ話とその注釈、そして当時の家族の
様子が描かれています。
作品の良しあしは別として、奥さまに向けていろいろな話を作り
続けたというだけで、夫婦の愛情と言うものの深さを感じさせて
くれます。
眉村さんはSFを得意とするらしく、空想的な話が多く見受けら
れますが、逆にその1話ごとに加えられている注釈は、当時の眉村
さんの感情や奥さまの容体などを記されていて、その間には空想と
現実の世界と言う大きなギャップがあり、もしかしたら眉村さん
自身がこの現実から逃れたかったのではと想起させます。
しかし後半、最期の時が近づいた奥様に対して書いている文章は、
感情を出すまいとしてきた眉村さんが完全に現実と葛藤する内容が
1話として描かれており、とても印象的でした。
一度読んだだけでは、その良さは深く噛みしめる事ができそうになく
星は3つですが、やはり自分も年齢を重ね同じような境遇になった
とき、1日1話を書き続けた眉村さんの気持ちや、その中に込められ
た深い思いがさらに心に伝わってくるのだろうと思います。