精力絶倫の豪商・西門慶が抱える数多くの妾の中でも、第五夫人
の潘金蓮は、絶世の美貌を持ち、稀代の大淫婦といわれていた。
西門慶をめぐり、妾同士が妍を競う日々の中で、しばしば陰惨な事件が起こる。
屋敷に出入りする西門慶の友人・応伯爵は、毎回真相を
見抜くのだが、決して犯人を糾弾したりしない。なぜなら……。
陰惨でグロテスクな犯行が、純粋で切実な動機を持つ犯人によってなされ、
それを探偵役が黙認し、時には、手助けまでするといった形式の連作短篇。
普通のミステリにおけるハウダニットを期待すると、正直肩透かしですが、作品
の世界観に基づく奇想天外な犯行の趣向それ自体がユニークで、楽しめました。
とはいえ、死体の切断・移動のトリックが冴える「赤い靴」と
「女人大魔王」は、ミステリとして見ても文句なしの傑作です。
後半の短篇からは、
『水滸伝』の豪傑たちが登場し、物語が一気に緊迫してきます。
そして、主要人物の死を経て、カタストロフィになだれ込む終盤の展開は圧巻です。