竹書房文庫でホラーものと言えばここ最近は超怖い話や恐怖箱、東京伝説とスタイルが大体固定化されていて、その中に突如でてきた本書はかなりの異端児であると思う。
うえやま洋介犬氏は昨年、やはり竹書房文庫で「遺伝記」というホラー小説短編集に参加されていた。氏の場合、最初の原作は掌編小説であったのだが、文庫本収録時にはそれがマンガになって収録されていた。小説の中に不意に現れたこのボーナストラック的な仕掛けは、遺伝記を読んだときに面白いなあと思っていた。
今回の「妖幽戯画 幽玄漫画怪異譚」には遺伝記の時と同じく編者の加藤一氏が関わっている事もあり、遺伝記のボーナストラック仕様を更に発展させた形として本書が作られたのではなかろうかとも考えてしまう。
「妖幽戯画 幽玄漫画怪異譚」はそれほど厚くはない文庫本ながら目次にはびっしりとタイトルが並び、これを見ただけでかなりのお得感が期待できる。実際、内容のほうもバラエティに富み、マンガと文章の得意分野とは何かを意識した上で作られたスタイルで、それぞれの持ち味を過不足なく発揮していて好ましい。
ひとつだけ難をあげるとすれば、最初でもふれたように、竹書房文庫の恐怖もの路線のスタイルがある程度固まっている現在において本書がかなりの変わり種企画であるがゆえに、読者によっては評価が分かれるかもしれない点があるものの、怪談やホラーと言えばどうしても似たり寄ったりになりがちな流れの中で、こういう意欲的な試みが成された事は個人的には大いに評価したいと思う。