渋澤氏が裏の欧米史を飾った「妖人奇人」を陳列物風に紹介したエッセイ。澁澤氏の黒魔術的嗜好が横溢しており、同好の士の方には楽しめる。
「女装する事を法で決められた美青年外交官(スパイ)」デオンは笑えた。デオンが本当に女だったと言う説もあるようだから興味津々である。他の章でもそうだが、澁澤氏はこうした情報を一体何処から収集するのだろうか ? 「ラスプーチン」の娘が書いた父の伝記も、歴史の虚実と言う点で興味を惹く。よく比較される道鏡(俗説に反して、一生不犯だったと言う)にもし娘がいたら、どんな伝記を書いたであろうか。「切り裂きジャックの正体」はこれが定説なのであろうか ? 私は謎のままだと思い込んでいたが...。「ノストラダムスの予言」を採り上げた執筆当時の先見性は買えるが、今となっては流石に色褪せた感じ。「哲学者と魔女」の章では、姑護鳥や陰魔羅鬼も参照され(京極夏彦氏の世界)、西欧・東洋の伝説の共通性を感じさせる。著名な錬金術師「カリオストロ」のようなイカガワシイ人物の評伝を書かせると、澁澤氏の筆は本当に冴える。
史上最大のカニバリストが肉屋であったと言うのも出来過ぎた話。確かに、店兼用の家に肉片や骨片が転がっていても疑われる心配が少ない。
全体として飄々とした人物伝であり、個々の話題(人物)に興味を持った方への道案内的役割を果たしてくれる。同好の士の方は、手に取って損はない本。