気持ちが悪い、まったく気持ちの悪い作品だ。物語の基本線は「パーフェクトブルー」のような、ミステリーホラー。それに二人の刑事という傍観者を入れるれて視点を安定させる。これは「千年女優」っぽい。今敏氏の得意技とも言える、キャラクターを突き放したような描き方が、その不気味さを煽る。少年バットをめぐる事件がまずお話の軸だけど、どうやらそれを真正面から追っているのは二人の刑事だけで、他のキャラはみんなこの事件を周辺にいるようだ。少年バットの事件でそれぞれがこうむる変化みたいなものをそれこそ短編アニメのタペストリーのように結び付けてひとつの大きな物語にしてしまおうというのだろう。この巻収録はおそらく話のベースになるのであろう、月子がまず少年バットに襲われる話しと、それとは一見まったく関係ない小学生の話。だけどこれを見ただけで今監督のうまさに圧倒されてしまう。すべてが絶妙なのだ。これからバトンのように主役が回されていき、ついに少年バットとは何者か!!というところへ流れていくのがわかる。でも内容がどうなるかはわからない、見当もつかない、それがうまい。
演出もうまい。氏はなぜこうも汚い人間を描かせるとうまいのか。はじめからもう気持ちが悪い。思わず吐き気がしそうな満員電車の描写、押しつぶされそうな重い空気と人の表情。そのBGMとして携帯の会話の切れ端が使われ、そこでの会話は脈略がなく一方的で、無機質であって、なおかつ人の勝手な言い分の断片でもある言葉、言葉、言葉。無関係の人間が事件を語る噂話で、事件の説明をやっているのもそれで、無意識の悪意が透けて見える構成。他にも月子のブラウスに透けて見えるブラをなめるように見て、川津が溶けかけのアイスをぺろっり。うーん、気持ち悪い。人の汚い部分を嫌というほど見せつけるこの作品、気分的に落ち込んでるときには見ないほうがいい、きっともっと落ち込む。