本書の著者は、昨年の総選挙で自民党圧勝の仕掛けを作ったことで一躍有名になったPR会社の社長だ。著者曰く、カボチャを馬車にはできないが、煤けた美人の煤を拭いて本来の美人を見せることは出来る、とか。私はここで著者の言う「働きかける対象」、すなわち取材する立場だが、同社の選挙イメージ戦術に踊らされ、「コミュニケーションを変えた自民」的な報道を量産してしまった愚か者の一人として、反省しきりに読んだ。
読んでいて、いちいち腹が立つ。書いていることが記者にとって実に痛い点を突いているからだ。記者にとってノウハウの根幹とも言える「ニュース価値」や「報道内容のストーリー」まで彼ら自身で作り、「こうすれば取り上げてくれますよ」などとアドバイスしているそうだ。こうして記者は踊らされているのかと感じた。中でも新生シーガイアのPRには驚かされた。スパリゾートとしての売り出し方に加え、ビジネス誌向けに「一度つぶれたリゾートが外資の力で再生」というストーリーで売り込んだという。だが、相手は駄目だった部分も晒さなければならないので、取材を受けてくれづらいのだが、マスコミは読者受けする復活ストーリーは大好きだし、「外資」という言葉に魅力がある。それを分かって、あえて過去のマイナスをさらけ出して取材を受けるのだから大したものだ。
PR会社は良い所をさらによく見せるとはいうものの、記者とは本来、世間で0からニュースを拾い上げてこなくてはいけないが、彼らの「活躍」によって、本来取り上げるべき物が取り上げられなくなっているのではないか、という懸念は感じた。PR会社に乗っかった取材は楽ではあるが、記者の本来持つべきノウハウを失わせる。という意味で、記者にとってPR上手が増えるというのは決して好ましくはない。が、メディア向けに情報を発信しようとするすべての人にとって、全体として、自社の宣伝臭はあるが、本書はかなり役に立つと言える。