この本を読むまで、ヨーロッパ人が北アフリカで奴隷として働かされていたとは知らなかった。
訳者があとがきで書いているように本書でのテーマは歴史の教科書で一切触れられていないし、奴隷というとせいぜいアメリカでの黒人奴隷の話しか知らないのがほとんどの人に当てはまるのではないだろうか。
だから、この本のタイトルを見たときには衝撃を受けたし、本の中身を読み進めていくことでさらに多くの衝撃を受けた。
残虐なスルタンの気持ち一つで生死の境を潜り抜ける総勢100万人にも及ぶ白人奴隷。
黒人をヨーロッパで奴隷として使用しているヨーロッパ人がモロッコでは黒人に見張られるという皮肉を、彼らは劣悪な環境の中で何を思ったのか。
もちろん、捕らえられたモロッコで北米人は何を思ったのか。
記録に残された部分に基づいた構成なため上記のようなギモンが本書を読んで明かされることはなかった。
けれども、現代のキリスト教vsイスラム教という「宗教」という対立軸を挟んだ支配の構図が現代まで続いているというのは見逃せないポイントであり、この対立軸はこれからも消えることなく我々の社会を脅かすだろうという意識が改めて湧いてきた。
「面白い」という表現は語弊があるが、読み物としては大変価値のある作品で、北朝鮮による拉致問題が一向に解決しない日本ではもっと注目されてしかるべき作品だと思う。