“女装と日本史”という視点で書かれた大層読みやすい本です。
ヤマトタケル伝説や南西諸島の「双性の巫人」にはじまって、王朝時代〜徳川時代の稚児や芸能者、陰間の世界、明治以降の「近代化による変質現象」、そして現代の女装コミュニティに至るまでの通史が1冊の新書にまとめられています。
とりわけ、著者の「性同一性性障害」を、「学問的権威で病名をつけ、精神疾患をもつ者として囲い込み、『治療』という形で『正常化』しようとする『19世紀以来の欧米の精神医学による負の価値付け』に過ぎない」との批判・喝破には誰しも共鳴を覚えるに相違ないでしょう(この指摘は、今なお同性婚を合法化しようとしない日本という国家の「人権を公然と無視して憚らない姿勢」に相通じる差別思想を鋭く剔抉するものに他なりません)。
惜しむらくは、本書が江戸〜東京という関東地方を中心に記されていることで、次回は長い歴史と伝統文化を誇る京都・大阪など上方に視点を据えた「異性装の日本文化史」といった書物を是非とも執筆して頂きたいと願います(e.g.井原西鶴の作品に見られる四条河原に於ける色子遊びや近松門左衛門その他、有名無名の執筆者による記述、民間習俗に残る女装など)。
さらに、古代オリエント社会の神殿男娼や、ローマ帝国がキリスト教化さるまで地中海世界に広く栄えた大母神に仕える自宮神官をはじめとする「トランスジェンダーの世界文化史」といった内容の書籍も、機会があれば記して欲しいと存じます。