山崎氏の作品はドロドロした人間関係が抜群の描写力で描かれていて大変面白く読めるものばかりだが、この作品もその例に漏れず興味深い作品だった。まず私が作品を読んで関心したのは、氏の法律に関する知識の豊富さである。ストーリーの核をなす遺産相続に関する法律もさることながら、普段なら我々には全く縁のない山林の所有権に関する法律について大変詳しく書かれており、氏の博識ぶりが伺える。そしてラストの大どんでん返しもまた痛快だ。肉欲、金銭欲、そして怨恨-矢島家に渦巻く権謀術数のドラマは、三姉妹の父であり、同時に女系家族の陰湿な家訓に縛られ、虐げられ続けた男・嘉蔵が妾・文乃に託したある「驚くべき」方法によって終止符を打たれる…。