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静枝は明らかに他人より恵まれた資質を持っていた。まず美貌。それから多分少しは、文章を書く才能も。けれどそれらを活かす賢さは無く、むしろ台無しにする愚かさをたっぷり持っていた。その愚かさはあまりに単純で哀しいほど。頑張って不幸になっていく人。幸せになりたいと思えば思うほど、間違った方向へ突っ走るばかり。
一言でいえば静枝はだらしない。最近の言葉で言えばADD(片付けられない女たち)かもしれない。家事能力、経営能力、要するに「何かをきちんとすること」が出来ない。家事だけならいいが、人生のすべてについてそうなのだ。男との関係も、仕事も。目の前の安っぽい菓子に飛びついて頑張るだけ。現実を見通す力が無く、何よりもポリシーが無い。だから客観的に見れば何もうまく行くはずはなかった。そして、すぐ自分に都合の良い夢を見て現実が見えなくなる静枝の性質は、年齢と共にひどくなっていく。
私は静枝に「女文士」、つまり作家・芸術家の性質や情熱をほとんど感じなかった。彼女はただ誉められたい、成功したい、愛されたい、幸せになりたいと願っていただけで、別に作家でなくてもよかったのだと思う。そしてトンチンカンな試みばかり必死で繰り返した。もちろんこんな愚かな人が悪人になれるはずもなく、涙もろいやさしい人である。ただ、これもポリシーが無いから垂れ流しの幼稚なやさしさだ。
作家・芸術家という面は希薄で、だからこそ普通の女性の人生に通じる怖さ・哀れさがある。現代にも「恋も仕事も」というフレーズがあるがそこには何もポリシーは無い。こんな人いると思う。
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