私は、まだ「小さいおうち」を読んでいないが、レヴューなどを読むと、この本の内容とかぶるところが多いように見受けられた。
昭和初期という時代を女中、あるときは女給として生き抜いた「すみ」は、こずるくて抜け目なく、でも、根本は愚かで最初のうちは好きになれなかった。もっと、他の生き方があるでしょう。どうして、こんなひもみたいな男に関わるのさ。宇野千代の「おはん」を彷彿とさせた。
でも、浅草のダンサーになりたくて舞踏教室に通ったり、いわゆる上流家庭に奉公する中でプロとしてノウハウを学んだり、いつも前向きなんだ。無学なのに(無学だから)たくましい。終章の文士の言葉、「君は強者だね」これがすべてを語っている。生きる力ってやつだな。
昭和の荒波を一人で生き抜いてきた「すみ」は、秋葉原連続殺傷事件の喧騒の中で息を引き取る。けばけばしい平成の東京も、セピア色の昭和の東京も、そこにうごめく人の営みは同じ。若い女の子たちは自分の若さを承知でとことん利用する。それに群がる男たちも全く変わらない。
昭和初期の世相・・・非合法活動、2、26事件、カフェーの女給、浅草レヴュー、満州、ナチスドイツの台頭・・・そんなものをうまく取り入れながら、最後は平成の東京に持ってくる作者の手腕。計算づくってかんじもするけど、巧いです。