愛の不毛を描き続ける映像作家ジャン=リュック・ゴダールならではの印象深いフィルムです。『気狂いピエロ』でもその魅力を堪能させてくれる監督お気に入りのアンナ・カリーナが人生の矛盾ついて問いかけ続ける女ナナを悲しく可愛く演じています。
ナナが経ていく、自立、失望、悟り、思考の時、希望、そして運命の結末が12話からなるショートストーリーによってつむぎあわされていくあたりからとても斬新なものを感じます。特に、デンマーク無声映画の巨匠カール・ドライヤー監督の傑作『裁かるるジャンヌ』を観ながらこれから火刑に処されようとするジャンヌ・ダルクに迷い多き己の姿を重ね合わせて涙するシーン、退屈な場面を打破するかのようにジュークボックスの音楽に合わせて激しく踊るシーン、老哲学者の言葉に真剣に耳を傾けるシーン、やっとつかんだ恋人とのささやかな幸せを謳歌するシーンなどが胸に染み入るほど切なく秀逸です。
ゴダール監督が書いた彼らしい気取った台詞とモノクロ画面の持ち味を最大限駆使した美しいコンポジションも健在。特に、登場人物の後ろ姿を強調した思わせぶりなアングル、左右をいったりきたりするカメラワークに面白みがあります。『華麗なる賭け』のミッシェル・ルグランによる哀愁ただよう音楽も適材適所に挿入されて雰囲気を盛り上げています。
ゴダール監督得意の強引ともいえるほど突然やってくる結末。FINの字幕が流れた後、とり残されたような気分になりながらもピュアな乙女ナナの悲哀に切々と感じ入ってしまう、これは悲しくもつかの間の生の輝きに満ちた秀作。