00年から04年にかけて実際に起こった13の「女が鍵を握る事件」について、その女が加害者なり被害者なりになる必然性のようなものに焦点を当てて考察してます。ただし著者自身が「実際の事件を元に、自分の妄想を書き散らしたもの」と断っている通り、実質的には現実の事件に触発されて書かれた短編小説集と考えた方が良いです…
と書くと、『週刊新潮』の「黒い報告書」シリーズを連想する人も多いのじゃないか。私自身はまともに読んだことないし、そもそも『週刊新潮』も買ったことないんですが、ファンはいるらしい。で、最近は著名作家が執筆することも多いらしく、昔からの「黒い報告書」ファンを公言している岩井志麻子とか、内田春菊とか、そして中村うさぎも何本か書いてます(未読ですが)。
で、本書ですが、確かに独立した「短編小説集」として読むと、同じところをグルグル回っていて平板かもしれません。でも、これって「現実の事件に触発された」ってところがミソだと思うんですよ。しかも「黒い報告書」とは違って創作に開き直ってるワケじゃなくて(だから、ロクに読んだことないんですが…)、著者なりに「真実」を追究する姿勢がある。
それに、著者がノッてるのが伝わってくるんですよ。ほとんどイタコ状態で、「女たちの心理描写を一人称で書き始めると、私は、自分に彼女たちが憑依しているのか、彼女たちに自分が憑依しているのか、わからなくなって」しまい、描かれている女の独白と描いている中村の独白も混じり合って区別がつかないほどです。
現実の事件という核があることは、中村にとってやっぱり重要だったんでしょうね。事件をフックにして、中村が自分の中に潜むものをズルズル引っ張り出し、育てているという印象です。これ書いてる間、きっと中村はとっても濃い快感を味わったでしょうね。上手下手や好悪は別にして、中村という人が「書く」ことを通じて救われる「作家」であることは、よく分かりました。