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軽快なテンポで進むクライムノベルである。作者の他の「取引」「震源」などの作品と同様、本作品も綿密な取材に基づいて作られており、本作品を読むと、自分も偽札を作れそうな気になってくるから不思議である。また、ボリュームたっぷりでありながら、一気によませるあたり、さすがである。
一方、あえて難をあげるとすれば、「エピローグ」である。さまざまな妨害に遭いながら「偽札づくり」を成し遂げようとする主人公達にどんどん感情移入し、上下巻で900ページ以上を読むことになるのだが、このたった5ページの「エピローグ」によって、作品による充足感が損なわれたと思うのは私だけだろうか?
面白いミステリーである。しかしこの「落語の落ち」のような「エピローグ」をあえてつけた意味が理解できない。
それは彼らが人を傷つけず、理想を追い求めるロマンチストであり、
ルパン三世に通じるかっこ良さがあるからです。
あえて難を言えば、主人公の偽札作りの情熱への動機というか、
必然性が弱い点や、勝手に保証人にされている不可解さがありました
が、作者ご本人のコメントにもあるように、とにかく面白さ重視で
エンターテイメントに徹しているので、細かい点を気にするのは、
この小説の正しい読み方ではありません。
前編通して、非常に映画的・映像的であり、情景はもちろん音楽まで
聞こえてきそうなシーンもあります。
この本を読みながら財布から札を取り出した人は、決して私一人では
ないはず。この絶妙なリアリティーとアンリアリティのバランス。
傑作です。
ほんと速い。流石は真保裕一。最初から最後まで読者を惹きつけ飽きさせない。スポーツ紙で連載されていたと言うが、自分がもしそこで読んでいたら次が楽しみで他ならない。ついつい時間を忘れさせてくれる書であることは間違いない。ホワイトアウトをも越える速さと今回もアクションで魅せてくれる。そのホワイトアウトでファンになった読者(俺もか)ならより一層楽しめるはずだ。登場人物も今回はユーモアがあるしこれほど共感できる犯罪者初めてであるから面白い。
どうも主人公は東建ファイナンスと縁が続くようだ。特に渉外部長の江波と佐竹。元々こいつらがいなければ偽札なんぞは作らなかったのだろうが。しかしそのおかげで水田や幸緒とも面識がなかっただろうから憎めない。運命とは実に恐ろしい物だ。小説の中じゃなく、リアルな世の中の方はもっと運命に左右されているかもしれない。結果論から言えばどうってことないのだろうが。そしてヤクザとその2人がいるから3回もの偽札を作れる。最終的に主人公の漠然とした目的がでたのだから面白い物だ。
真保裕一も実に調べている。毎度の事ながら敬服するしかないようだ。ラストはこれもまた仰天だった。ミステリならではの「落ち」というやつなのだろうが。エピローグでは作家の遊び心がでている。まあ、人物造形やらストーリーやら全て遊んでいると言えばそうなのだが。
出来は抜群だ。連載というのにプロットもいい仕上がりだ。一風変わったエンターティンメントというのだろうか。ああいうラストだったとは言え登場人物が彼らだったせいか読後感は爽快であった。今年読んだ中では「亡国のイージス」をも上回りかねない。あくまでも自分野中では、だが。やはり読書は面白い、やめられない。そう思わせる書である。真保裕一の入門としてもお薦めできる書でもあるだろう。ぜひ手にとって欲しい。
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