乱世の只中、十九歳の石堂一徹はすでに抜群の軍才と荒武者ぶりで、武勇に長けた主君・村上義清の元でその武名を轟かせていた。信濃を取り巻く混沌、譜代と新参者という家中の対立の構図が上手く織り込まれ、戦の臨場感にはやはり圧倒される。
そつのない流れと文体はそのままに、前作「哄う合戦屋」とは一味違う雰囲気を持つ2作目。
一徹が新妻へ教え聞かせる石堂家の歴史。家人たちのやり取りは明るくユーモラス。また、思いやり深く呆れるほど子煩悩、広く和漢の書物に親しみ漢詩をそらんじる、一徹の素顔に再び魅了される。
孤高の軍師のルーツはこの一冊で明らかになる。が、若干ホームドラマ的な部分が多いような気が…。なので満点には欠けるけれど、前作を読まれた方にもそうでない方にも広くお勧めしたい物語。
一徹が村上家を辞することになる決定打、終盤に起こる悲劇は胸を締め付け、この時代の武門の美意識を痛感させられる。