民族・文化・環境が複雑に交じり合い、凝縮されたものが「食」に反映されていることを本書を読んで深く納得した。蝉や蛭、幼虫、蛹など、人間がこれまでに食べてきた虫を紹介する章では、生理的に腰の力が抜けてきたが、簡易に動物性蛋白質を摂取できるスマートな方法だったのである。ラクダの瘤、猿の脳味噌、鶴、家鴨の水掻きなど唖然とするような食材が登場し、頭がクラクラしてきたが、人間の食に対する貪欲さ、尽きぬ好奇心、知恵の結晶をそこに見ることができる。医学が現在のように確立する前は蛇の血、臓器などを食す「薬食い」、蛆虫や蜥蜴を漬け込む「薬用酒」などが人間の健康に貢献してきたのである。食の世界を知ることは、人間を知ることでもあった。