2010年12月15日、カーネギー・ホールでの演奏の2日目、あのブラームスの交響曲第1番の翌日の演奏です。
第1楽章(夢、情熱)では、小澤征爾さんが指揮をしながらオケの休符のところでブレスをしている音まで拾うほどクリアな録音でした。ライヴ録音ですので、指揮者の息遣いがいろいろな箇所で入ってしまうのは技師としては計算外だったのでしょうが、臨場感は如実に伝わってきます。
ベルリオーズの「幻想交響曲」は色彩豊かな楽曲と言われていますが、サイトウ・キネン・オーケストラの弦の美しさは多く語られてきており、屋上屋を重ねますが、第2楽章(舞踏会)では特にそれが際立っていました。
第3楽章(野の風景)では管楽器、打楽器のプレイヤーの能力の高さを感じさせるフレーズが次から次へと押し寄せてきます。絶妙なアンサンブルは指揮者の小澤さんへの全幅の信頼と深い絆の証でしょうから。
シューマンは「ベルリオーズを天才と認めるべきか、それとも音楽上の冒険者として認めるべきか」と語っているようですが、ベートーヴェンが亡くなって3年後にこの交響曲が初演されたことを思うとその比喩の通りだと思いました。
有名な第4楽章(断頭台への行進)のオーケストレーションの巧みさと迫力はこの曲の心髄でしょう。言うことなしです。
第5楽章(魔女の夜会の夢)は圧巻の演奏です。珍しい楽器も多用しながら、大きな山場を作り、それを見事に表現していました。金管も木管もそして弦も打楽器も皆緊張感を持ち続けながらラストになだれ込みます。終演後の大歓声はニューヨークの観客だけでなく、このCDを聴いた者の思いが全て込められていると感じました。Bravo!!
ベルリオーズの「幻想交響曲」はミュンシュとパリ管の1967年盤が情熱的な演奏として高い評価を受けていますが、このライヴ録音は日本人の指揮者とオケの音楽水準の図抜けた高さと豊かな感性をもった演奏として語り継がれるべきものだと評価しています。