10ノットあるかないかのフネが太平洋戦争を生き抜き、その船種を変える事6度。測量、物資輸送、在留邦人の引き揚げ、灯台補給、救助パトロール、そして南極観測。数奇な船歴と共に「彼女」が就いた任務の殆どが物心両面において人を助ける役目だった。そして数え切れない人の人生に、このフネの存在が寄与していたという事実。こんなフネが他にあるだろうか。南極観測船のイメージしかなかった自分にとっては目を見張る思いで読まされた。正に感動の海洋ノンフィクション。本書を手掛けたのがテレビ界出身の若い女性というのにも失礼ながら驚いた。平易で読み易い文章ながら、うわついた所が全く無いどころが、しっかりした歴史認識、社会や政治に対するきびしい視点も覗かせているが、それを声高にひけらかさない控え目な筆致。海に対する自らの思いをさらりと披瀝しつつまとめるくだり等、じつに好感の持てる良書に仕上げている。前掲のレヴュアー氏同様、1人でも多くの方に読まれるべき一冊だろう。