この本に興味を持った方の多くが、最近になって、この阿佐ヶ谷住宅の存在を知ったのではないでしょうか。同類を求めるようですが、私がそうで、ひょんな事から辿り着きました。そして同時に、現在建て壊しが決定しており、従って入居は不可能と知る事になったのも、私と同様ではないでしょうか。つまり、この本を読んで、既に手の届かなくなったものへの憧憬を掻き立て、せめて最後の姿を見に当地を訪れることで気休めにしようと思う点で、あなたと私は相憐れむ仲な訳です。
本書を読み終えた時、このような住宅が出現するに至った背景を知り、それが結実することの出来た偶然に感謝すると共に、知ることの遅すぎた我が身の不運を嘆くことになるのです。手の届かない輝きは殊更に美しく、それを知りつつ尚渇きを増そうとする我々は何と救い難い人種であるのでしょう。
さぁ、頁を開いて、かって存在した楽園の残照に涙して下さい。