浅倉久志さんのお気に入り作家ということで刊行に期待してたヴァンスの短編集。
冒頭の2作品を読んですぐ、なんとなくモヤモヤした落ち着かない読後感が残りました。
これは舞台を異星でなく地球の架空地域にして、SFというジャンルを取っ払ったら、よく言う「奇妙な味」の小説としてより味わい深いものになったんじゃないか。少なくとも現代日本ではそのほうが多くの読者を得られるだろうし。
けれどもその他の作品を読むにつれ、あ、やっぱりSFでよかったんだ、と気付きました。
奇妙な味の作家は多いけれど、それだけではない鬼火のようなきらめき--ストーリーを追っているときはリズミカルだけど地味な文章に思えるのに、読後にはキラキラと跳ねていたような残像が残る独特の魅力は、SFという世界にこそぴったりはまっていたのだと。
アイデアというか、オチにあっと驚くしかけや目新しさがあるわけではないのに、この鮮やかさ。作家がジャズで身を立てようとしていたと聞くと、なるほど、そうだまさにジャズだ、納得させられました。
はまって、味わう、そういう作家かなと思うので、好みは分かれそうですが、食わず嫌いやスルーだけはもったいない味わいです。