本書は、鈴木博之氏(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授)、藤森照信氏(東京大学生産技術研究所教授)、隈研吾氏(慶應義塾大学理工学部教授)という3人の著名な建築史家と建築家と、松葉一清氏(朝日新聞社編集委員)、山盛英司氏(朝日新聞西部本社報道センター次長)の2人の朝日の関係者(朝日新聞日曜版に掲載したものですから)が選んだ「奇想遺産」と言える建築物が掲載してあります。
見開き2ページで1つの「奇想遺産」が取り上げてあり、所在地・完成年・建築家とおおよその位置を示した地図が載せられていました。
表紙にも使用されているフランスのオーベルニュ地方にある「ル・ピュイ=アン=ブレ」には驚かされます。藤森氏の解説によれば、ケルトのドルイド教の聖地だったそうで、ドルイド教は「木や岩や泉に聖性を認めて拝する自然信仰」で、岩への信仰がかくも素晴らしい景観をもたらしたということでした。
カンボジアの「タ・プローム」遺跡は、自然と人間の建造物との共生と遺跡の修復の難しさのどちらも内在している遺産でしょう。遺跡を覆う巨樹は神々しく大地に根を張っています。
「武雄温泉 楼門・新館浴場」が辰野金吾の設計とは驚きです。東京帝国大学工科大学長を辞して設計事務所を開いた頃で、何でも依頼を引き受けたことからこれが造られたようです。今や国指定の重要文化財になっていることからも奇想遺産は文化財としての価値を持っていました。
開平のデャオロウも世界遺産に指定されていますが、「なんだ、これは」という景観です。ジェンネの泥の大モスク、シュバルの理想宮、ロサンゼルスのワッツタワーなどを唖然として眺めていました。