現在では『近代文化史入門 超英文学講義』 と改題され講談社学術文庫に入っているものですので、そちらを読めばよいのかもしれませんが、私個人は講談社文庫版はなぜか読みづらく感じて途中で放り出してしまいました。その後、同じ本だと気づかずこちらを購入、面白くて一気に読み終えました。
何が違うかというと、元の本で、<文学だけ読んでる文学者に文学はわからない>という意味の言いたい放題を言っている<毒>の部分が、文庫版では微妙に修正されているようなのです。それも、どこがバッサリ改稿してある、というよりは、<言葉尻>の次元で。文庫版の冒頭で、品格第一のご時勢でもあり「少し挑発の修辞が過ぎる節々」は「躊躇なく削った」と断り書きしてあります。しかし、もともと、出版社に2日間通い、酒をかたむけながら、興にまかせてしゃべりまくった「語りおろし」。そうした「挑発の修辞が過ぎる」部分にこそ、いわば唯我独尊が身上というこの大学者の勢い、持ち味がよく出ているように思うファンもきっと多いのではないでしょうか。その意味で、こちらのほうがライヴ感満点、読み物としても痛快のように(あくまで個人的には)感じました。
もちろん修辞云々は別にして内容は大変刺激的。ニュートンの著書『光学』が同時代の文学者によく読まれていたこと、ボヘミアからイギリスに亡命したコメニウスが「見えない大学」を創設し、勅許を得て王立協会になり、その経済部門が紙幣、株式会社、ロイズ保険など近代の経済制度を生み出していったこと、スイス人化学者ロジェが有名な辞書『ロジェズ・シソーラス』を作ったこと、20世紀のシェイクスピア・ルネッサンスで中東欧の学者がはたした大きな役割など、奇抜で新鮮な知見がごぼごぼあふれ出してきます。この点は文庫版でも変わりません。