ビリー・ホリデイの生涯は悲しみと、愛憎、そして歌によって彩られている。少女時代の悲惨な出来事、人種差別の中で、必死に耐え、自らの魂の叫びをジャズ、そして歌によって見出していった思春期。涙なくして読破することが出来ないこの書物は、日本のジャズシーンに与えた影響力も大きかった。油井正一と大橋巨泉が半分ずつ翻訳したというエピソードも有名で、この書物によってジャズの何たるか、黒人の差別の実態、女性の悲しさ、麻薬や酒におぼれながらも真実を捜し求めようとしたホリデイの人生を知ることができる。そしてホリデイの十八番「奇妙な果実」が、殺された黒人が木に串刺しにされているという惨状であり、それを淡々と歌うホリデイの悲しみと怒りの深さが、我々に衝撃を与えるのだ。