たとえば節穴があったら思わず覗き込みたくなる気持ち、というのは実際にはやらないにしても、心情として理解はできる。しかしその中に人間の本質が隠れているとは普通、あまり思わないだろう。
本書は、こんな取るに足りないような人間の習性、サガ、といったもの(=奇妙な情熱)を通して、人間が「生きている」という実感、リアリティを獲得しているのではないか、について論考したものである。
取り上げられてた「奇妙な情熱」は4つ。ミニチュアへの情熱、境界線へのこだわり、似ているものへの興味、コレクションへの執着、である。いずれの話題も卑近ではあるが、健全なココロと壊れてしまったココロの間にあるあいまいな領域を扱っていて、人間の精神というものの奥深さを感じずにはいられない。さすがは臨床精神科医の手になるものである。
著者の春日氏の本は初めて読んだ。精神科医としての知見をベースにした哲学的論考は決して平易ではなくむしろ難解に近い。が、文章は極めてわかり易く独特の暖かみがある。かなり気に入ってしまった。他の著作にもぜひ当たってみたい。お勧めの一冊である。