以前、図書館から借りてきて読んだことがあったのですが、もう一度読みたくなったので思い切って購入しました。
本書の前半、陸軍省で編成動員の実務に携わって、膨大な量の物資の補給や運搬計画に関する責任者として誠実にかつ地道に職務を全うしようとする姿に、政治的な動きをする軍人たちの姿ばかり(そういう人物の事績の方が語られることが多いので)を読んできた者としては、この人の身の処し方はとても清冽なものに見え、大変強い好感を覚えました。
阿南陸軍大臣の高級副官(秘書役)として陸軍省での勤務において、終戦のゴタゴタの最中での阿南大臣の苦悩や、終戦直後のGHQによる逮捕前の東條英機元首相の懊悩を、彼等の側近くで彼等の信頼の元に見つめ続けた氏の行動は、その後の引揚援護局での地道な作業を倦まずに行っていく強い情念の動きの原点が、こうした巡り合わせから生じたのだろうと思わせるものがあります。
戦後、旧軍人の引揚作業に従事し、厚生省の内局である援護局の実質上のトップとして遺族年金の支給や靖国神社への英霊の合祀作業、また南方で野晒しのままとなっていた戦死者の遺骨の収集作業に尽力し、元軍人として「旧軍の後を清くする」という自身の言葉を実践することで役人人生のほぼ全てを費やした氏の姿からは、阿南大臣や東条首相とはまた違った形で自身に課せられた「戦争責任」を引き受けていこうとする強い意志の存在が感じられました。
退官した後、自身が収集作業に携わった遺骨の受け皿としての「千鳥ケ淵戦没者墓苑」の整備と維持管理に後半生を費やすという生き方と合わせて、まさに昭和陸軍の葬送役を一身で体現した人物といっても過言ではない気がします。