奄美の島々とその文化に魅せられはじめると、誰でもまず困惑するのが情報量の少なさだ。初心者向けの、ちょっとだけ詳しくて奄美の島々の全体像を把握するのに参考になるような本が、今まであまりなかったのだ。それはきっと奄美の島々がまだ本格的には観光化されておらず、人々の暮らしと文化が昔と地続きのままで存在していて、島に触れるためにはあえてそこに分け入っていく必要があるからだと思う。研究者などを除けば、今までその労力をかける人があまりいなかったのだ。この本の編者の山川さんは、たぶんとても時間をかけてじっくりとこの本を仕上げた。丹念に人と会い、何度も島に足を運び、潮の香りを吸って過ごした時間が、この本の価値だと思う。この本には執筆者が十数人もいるが、奄美の島々の入り口は人だから、読者はまぎれもなく奄美の島々の多様な姿を知ることができるのだ。