元々は「アメリカ」という題名で知られていたというこの小説。
「失踪者」の方が作者が本来つけるつもりだった題名(の意訳)ではないか、ということで初めて改題されての発行らしいです。
主役の少年カールは、悪い事をしてない(むしろ被害者)のに両親によってドイツからアメリカへ放逐され、行き先々で捨てられて苦労を重ねていきます。
登場人物はどこか奇妙な人が多いけれど、筋としては特別に風変わりではないです。
カールは捨てられてもあまり動じずに受けいれている点が不思議なのですが、他は純粋で真面目で熱いところがあり、好感がもてます。
その辺り、他のカフカの小説とは違う感じがします。でも面白いです。
カールはアメリカで一旦幸運を得るも、その後はどんどん条件が悪くなり悲惨ともいえる生活を送るのに、常に喜劇的な要素が潜んでいます。
カフカ小説に多い「最初は区別のつかない2人組みの(ろくでもない)男」はこの作品でも出てきて、幅を利かせます。
「城」「審判」と同じく、これも未完。カールはどうなってしまうのか、分かりません。しかし逞しく生きていきそうな感じがします。