たとえば著者は、一般中小企業は経営の優先課題を組織の存続に置き、自社の経営資源を超えた経営をしないが、ベンチャーは会社の「器」を事業の具現化の手段とみなし、戦略上必要な経営資源を外部から積極的に調達すると論じて、ベンチャーのリスクの高さを浮き彫りにする。また、アメリカとの比較から日本のベンチャー経営の非合理性を指摘したり、投資と融資の「カネの性質」の違いを解説したりもする。ベンチャー経営者ならぜひ、頭に入れておきたい知識である。
こうした論考を踏まえて、著者の失敗もあらためて検証されている。その大きな要因にされている経営スタイルと経営資源の「性格の不一致」という視点はじつに興味深く、失敗があってこそ得られるものであることがわかる。また、結論から導かれている「経営に必要な『速さ』と『早さ』は区別して考えなければならない。『速さ』とは、情報収集~分析~決断~実行の早さ=スピードである。『早さ』とは、ビジネスをいつ開始するかという『商機』に対するタイミングである」という提言は、そのままスタートアップ時の指針になる。
本書にはさらに、経営者になるための条件や、経営者が犯しやすい間違いなどもまとめられている。起業をめざす人やベンチャーの経営者にとって貴重なアドバイスが得られるのはもちろん、失敗が個人の成長にとっても社会にとっても不可欠であることを実感させてくれる1冊である。(棚上 勉)
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