黎子と悠介は、学生の頃からの“友人”。恋人同士であったこともないが、三十半ばになっても黎子が頼りにするのはいつも悠介だった。しかし、黎子の元夫が失踪し、二人の微妙なバランスが崩れて──「欲望」。年下の男との恋につまずいた銀座の女を描く「安い涙」。恋の喪失感をテーマに、さまざまな恋のかたちが繊細なタッチで描かれる。切なく、胸に迫る四つのラヴ・ストーリーを収録。
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「欲望」は、バブルに踊って流されて落ちていく男を
救おうとする元妻と友人たちの物語。
友情と愛情と自己保身の狭間で揺れ動く人間達の感情がリアルに
えぐり出され、それだけでもさすがの筆力・・とうならされるが、
圧巻はラスト。
純粋に、誰かを救いたいと思いながら、時に無意識に人を踏みつけて
しまう人間という生き物の矛盾をまっすぐに見据えている。
誰のことを責めることもなく、喪失感と冷ややかな寂しさをかみ締める。
失恋とは、相手の存在と現実をそのまま受け入れることだ、
というやるせなさが伝わってくる。
鷺沢 萠は、人間の弱さやずるさに文句を言いながらも、結局はすべてを
赦してしまう優しい人間を書くのがうまい。
矛盾と喜怒哀楽を内包した人間という存在が好きなのだろう。
もう彼女の新しい作品を読めないのが、本当に寂しい。
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