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失われた歴史
 
 

失われた歴史 [単行本]

マイケル・ハミルトン・モーガン , 北沢 方邦
5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

イスラームの本質を「知の探究」「宗教的寛容」と見る著者が近代西欧科学・思想に多大な影響を与えた中世イスラーム文明の謎に迫る。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

モーガン,マイケル・ハミルトン
アメリカの小説家、ノンフィクション作家、外交政策を専門とするジャーナリスト。元国務省の外交官で、その後新平和財団を創設、主催している。若いひとびとに異文化理解の重要性を伝え、そのリーダーシップを養成するのが目的である。また1990年から2000年まで国際ペガサス文学賞を主導し、助言者となっている

北沢 方邦
構造人類学、科学認識論、音楽社会学専攻。桐朋学園大学教授、信州大学教授、神戸芸術工科大学・同大学院教授を経て、信州大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 448ページ
  • 出版社: 平凡社 (2010/9/18)
  • ISBN-10: 458274429X
  • ISBN-13: 978-4582744293
  • 発売日: 2010/9/18
  • 商品の寸法: 19.2 x 13.2 x 2.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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10 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
読了したわけではありません。アラビア語関連の用語のカナ表記が間違いだらけで、だんだん腹が立ってきましたので、その点指摘したいと思い、書いています。

原本を参照できない現段階では推測にすぎませんが、おそらく訳者は英語の表記をそのままカナ表記しているようです。が、ところどころ自由に読んでいますね。長音が入るべきところになかったり、不要なところに入っていたりしますが、これは仕方ないと思います。原文に特殊記号がつかわれていなければ、正確にカナ表記することは難しいので。ただそれなら、いっそのこと長音は全て省けばよかったのではと思います。その方が統一がとれますので。

それにしても、平凡社と言えば、『新イスラーム事典』を出している出版社。自分のところで出している事典の項目の表記と照合してもよかったんじゃないでしょうか。高校の世界史教科書や一般的なイスラーム概説書で用いられている表記とあまりに違うので、人物、地名、事項の同定ができません。読者をいたずらに混乱させるだけです。

一例を挙げますと、p.093に「グンデスハープル」という地名が出てきます。これだけだと恐らく理解不能ですが、後ろに「ペルシア・アカデミー」と続いていましたので、「ジュンディーシャープール」だと分かりました。これは、(恐らく原文では)GundeshapurとなっているのをGundes hapurと読んだ上でのカナ表記ですが、より正確にはGunde shapurとした上で、カナ表記すべきものです。sとhの間で区切ったのが間違いなのです。ちなみに、平凡社『新イスラーム事典』にこの地名は立項されていませんが、索引をみるとちゃんと「ジュンディーシャープール」となっていますので、表記のチェックは可能なはずです。

またp.345の、神学者にして哲学者(!?)「アル‐ガハザリー」に出くわしたときには思わず吹き出してしまいました。後ろの索引を見ると、「アル‐ガハザリーal-Ghazali」となっています。英文表記は特殊記号を使っていないことを除けば、正確に書いてあります。そうすると、GとHの間のaはどこから来たんでしょうか?すぐ下を見ると、ガザーン・ハーンも「ガハザン・ハーンGhazan Khan」とあります。やれやれ、ガザーリーも知らないで、この本を訳さないでほしいですね。

たかがカナ表記と思われるかもしれませんが、大きな誤解を生む元ですので、指摘させて頂きました。
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By 左党犬 トップ500レビュアー
 本書は、「イスラー文明の黄金期」を正当に評価すべく、米国人作家によって英語圏の一般読者向けに書かれた、400ページを越える大著である。
 米国の職業外交官として約10年間のキャリアをもつ著者は、その後長年にわたって異文化理解とリーダー養成を目的とした平和財団を創設し主催してきた。だが、本書のテーマであるイスラームの専門研究者ではない。

 著者が意図しているのは、ハンチントンに代表される「文明の衝突」論とは一線を画す議論を、史実に即して一般読者向けに展開することにある。
 現代社会を主導してきた文明が、ここ数世紀にわたって西洋文明であった以上、イスラーム文明の黄金期の知的遺産が、西欧文明に吸収されたものも、そうでなかったものも含めて、「失われた歴史」になっているのは、ある意味では仕方がないことだろう。
 しかし、いまやそのことに気がつかねばならない、というのが著者の問題意識であり、本書に一貫している主張である。あたかも古代ギリシア・ローマの時代から一貫して西洋文明が東洋文明に対して優越的であったかのような錯覚を抱かせてきた西洋近代、しかしそれは事実に反するのなのである。

 黄金期のイスラーム文明は、先行する古代ギリシア、ローマ、ビザンツ(=東ローマ帝国)、ペルシアの知的遺産の集大成である。アラビア語への翻訳をつうじて集積された膨大な知は、イスラームの文脈のなかで、数学、天文学、医学、その他諸科学の高度な発達となって大きく花が開いた。たとえば、『ルバイヤート』の詩人として知られるオマル・ハイヤームの、数学者・天文学者としての卓越した業績について本書で知ることができる。
 中世後期以降の西欧文明は、これらイスラーム文明が達成した知的遺産を、アラビア語からラテン語に翻訳することから出発したことを強調しておくべきだろう。中世後期においては、イスラーム文明と西欧文明のレベルはきわめて落差の大きなものであったのだ。

 しかしこの「失われた歴史」は、米国の一般読者だけでなく、日本でもまだまだ一般常識になってはいないようだ。アルコールやアルジェブラ(代数学)といった英単語がアラビア語起源であることが、雑学として知られている程度であろうか。
 本書の守備範囲は、狭い意味のアラビア世界には限定されない、広大なイスラーム世界全域をカバーしたものだ。イベリア半島も、トルコも、ペルシアも、中央アジアも、インドもすべて、イスラーム文明の及んだ範囲として捉えており、その文明圏において、イスラーム文明が達成していた知的遺産を「ロスト・ヒストリー」として語っているのだ。これが本書の大きな特色である。基本的な史実は押さえているが、この本の内容はどちらかというと、日本語でいう「歴史物語」に近いというべきであろう。

 歴史叙述にあたって過去形を使用せず、現在形を通していること、引用文がすべて擬古文で翻訳されている点は、正直いってうっとうしいと感じなくもない。
 とはいえ、大冊だが読む価値のある内容の本であるといえよう。
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西洋の欺瞞 2011/10/1
この本はイスラム共同体が果たした歴史的業績を見つめなおし、評価する本である。この本を読めば、子供の頃から親しんできた偉人の伝記が、いかに西洋に都合よく偏ってきたものかが分かるであろう。ルネッサンスから産業革命に至る、西洋の貢献を否定するわけではない。ただ、その前段階にあったイスラム共同体が果たした成果を、正当に評価せずに隠蔽することが”ご都合主義”なのだ。
古代ギリシア、ローマの文明が暗黒の中世を経て、あたかもルネッサンスで突如復興したように描かれる西洋中心史観。その暗黒と西洋が呼ぶ時代こそがイスラム栄光の時代である。そのミッシング・リンクを解き明かし、紹介する本が本書であり、「失われた歴史」の意味なのである。

日本人からみれば、ギリシアやローマはヨーロッパであり、西洋史観との親和性を感じることであろう。だが、それこそが落とし穴である。現在の西洋の中心をなす国々は、古代ローマ時代のガリアとゴート人が住む地域である。要するに辺境である。
対して、ギリシア、ローマを地中海を中心に眺めて見ればよい。中東、北アフリカとの親和性が見えてくるはずだ。カルタゴ、トロイ、アレクサンドリア、エルサレム、アレッポなどなど、地中海はひとつの文明圏だったのである。イスラム共同体はまさにそれを継承、発展させて高度な文明を作りあげたことが分かろうというものである。西洋はイスラム共同体から学んだのだ。

ここで重要な点がある。西洋はキリスト教会による富と知識の独占、相次ぐ戦乱、疫病により衰退していた。これを脱するにあたり、宗教改革とその後の世俗化(教会権力の否定)が必須であった。だが、イスラム共同体は、イスラムにより辺境から脱して高度な文明を築いたのであるから、世俗化する理由がない。西洋は世俗化こそが近代国家の条件のように言うが、それもまた欺瞞である。それは西洋での事情に過ぎない。キリスト教であっても、東ローマ(ビザンチン)帝国のように、中世を高度な文明で彩った地域があるのだ。世俗化は発展の条件ではない。イスラム圏の国々に世俗化を強要する西洋の傲慢な姿勢が、頑なで強硬な原理主義者を生み出すのである。世俗化は”頭でっかちな人間”を作り出す。”頭でっかちな人間”は原理主義的な傾向を強めるものである。その最先端をかつては共産主義が走っていた。
世俗原理主義者とイスラム原理主義者は西洋の鏡であり、同じコインの表と裏なのだ。一般の人はもっと中庸を求めている。

この本にある歴史を日本はもっと学校で教えるべきである。極東アジアの国が、西洋中心史観を世界史と称して教える義務はない。是非、多くの人に読んでもらたい本であり、これを読んだらモンゴル帝国の本も読んで欲しいと思う。モンゴル帝国も西洋史観では”悪の帝国”だが、モンゴル帝国が世界史を発展させた功績もまた、”失われた歴史”である。イスラムとモンゴル帝国、このふたつを知れば、アジアからヨーロッパまで、ユーラシア大陸の壮大かつダイナミックな歴史(それこそが本当に面白い世界史)が見えてくる。
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