私にとって初めて読むことになる「失われた時を求めて」です。以前から気になっていた本で、なかなか読めないという本がいくつかありましたが、この本もまさにそのような本です。
「読書ガイド」で、訳者高遠氏が書かれていますが、「今回の第一巻は、今まで無数の読者が挫折してきた巻である。」らしいのですが、私はそのような気は全く起こらずに、むしろすらすらと読むことができました。確かに、冒頭の寝返り、不眠シーンのこれでもか式の叙述にはそこそこうんざりはしますが、決して投げ捨ててしまうものではありません。それもこれも、考え抜かれたこなれた訳文のせいかもしれません。第一章のその部分以降も、投げ出すことなく、挫折することなく、興味を持って読み進めることができたのです。
数種類の既訳があるのにあえて新しい翻訳を出す、出さざるを得ないのにはそれなりの理由があるはずですが、その間の事情は、訳者による「読書ガイド」に詳しく書かれています。
この部分を読むと、高遠訳が読みやすい理由がよくわかります。
この文庫からプルーストの世界に入って行けたのはラッキーだったといっていいでしょう。一冊一冊、出版される順にゆっくりと読んでいけばいいのですから。
さらに読者のために解説用の写真、絵画等々も添付されています。これはありがたい、とてもいいと思います。
まだ第一巻目、全14巻もありますが、高遠氏いわく「あらすじのことなど考えず、また、この読書を何かの役に立たせようなどと思わずに、ゆっくりプルーストを読む時間を作って頂きたい。」「私たちに求められているのは、斜め読みせずに、一行一行丁寧に読んでゆくことである。というより、私たち読者の義務はそこにしかない。その代り、プルーストを読む行為が私たちに与えてくれるものはすこぶる豊穣である。」と。
ゆっくり、じっくり読んでいきたいと思います。巷にあふれるオカルト風の速読とは全く無縁の世界がここには生きているのです。