ゴシック的なホラー作品やSF的な寓話なども悪くは無いのだが、
語り手の精神的な歪みを描いた作品や犯罪を扱った作品が
とても真に迫っていて面白いと感じた。
著者の父は精神医ということであるが、なるほどなと思った。
特に心に残ったのは、語り手の語る物語の最後になるまで、
奇妙な出来事だとか、語り手の周囲の人々に非があるように思わせ、
真実が判ってくるうちに、語り手の妄想や病んだ心に気付き、
最後にあっと驚かされるという手法の鮮やかさと怖さである。
例えば、『もう一人の精神科医』の語り手の精神科医によると、
同僚の精神科医がかなり異常で問題のある人間に思えるが、
実は、本人が一番恐ろしい人間であると判るラストにはぎょっとした。