近代立法は多くの人を救った。それは揺るがない事実である。産業革命以後、労働者は人間らしさから疎外された存在となったと言える。それはマルクスが看破したとおりである。その意味では、労働基準法を始め、法は多くの者を救ったと言えよう。
しかし、他方で失ったものはなかったのであろうか? 金銭的には搾取されたと評される者たちが、実は定量的な、金銭に換算し得ぬ大きなものを得ていたとは考えられないだろうか。
本書は、一見理不尽な徒弟制度に再びスポットライトをあてるものである。現代からすれば理不尽と思える徒弟制度が、徒弟制度でしか伝え得ぬものを持っていたのではないか、実は徒弟制度はもっとも理に適ったものではなかったのかと再考する。
そして、それは当然に消費者たる我々が、徒弟制度への加害者たる意識を呼び起こさずにはおかないのだ。「職人の技」というものをもう一度見つめ直したい。最近では「道」という雑誌がなかなかいい記事を載せている。本書と合わせて読むと良さそうだ。