『バートン版千夜一夜物語』で有名な、リチャード・バートンの稀覯本と彼の記録に残されていない探検記をめぐるミステリ。
バートンの稀覯本を落札して一躍有名になった、古本屋のクリフのもとを、その本はうちの書庫から盗まれたものだと主張する老婦人が訪ねてきます。なんでも、彼女の祖父はバートンと友達で、家にはバートンからのサイン入り献本(要するに稀覯本の山!)で埋め尽くされた一大書庫があったのですが、80年前、祖父の死をきっかけに騙し取られたというのです。その中には、バートンがアメリカを訪れた際の日誌も含まれていて、それがあれば唯一バートンの伝記でも不明な部分が明かされ、ひょっとしたら南北戦争の非常に重要な場面にバートンが関わっていたことがわかるかもしれないのです。死に際の老婆に頼まれては、「いいひと」クリフは断れません。消えた大量の蔵書と誰も知らないバートンの秘密という誘惑もあり、クリフは老婦人に代わって蔵書探しをすることになります。ところが、老婦人を助けていた人のいい夫婦のうちの妻のほうが、強盗殺人にあってしまいます。その後もクリフの周囲で次々に不審な出来事が。元刑事としての意識を触発されたクリフは、蔵書探索と共に、殺人犯捜しにも乗り出すのでした。
相変わらず古書蘊蓄も満載で、各出版社の初版本の見分け方やら、古書売買で億万長者になる方法やらが挿入されてます。「人の家に行くと本棚で人格を判断する」なんて話が出てきて、かなりシンパシーです。今回は美人弁護士が出てきてクリフをサポートするのですが、この二人の会話がもう「おまえはスペンサーか?!」ってカンジにキザで笑えるのも見所。もちろん、バートンの歴史ミステリ的部分もとっても読み応えがあって、ダニングはストーリーテラーだなあと改めて感心します。