−−私の自由を最大限に許してくれた周英明という男。だから、私たちの結婚生活は続き、彼の死によって分かたれた今もなお続いていると、私は思っている。(本書 193ページより)−−
金美齢さんは、ヴェルディのオペラ『リゴレット』が好きだと言ふ。この本を読んで、私は、その理由が分かった気がした。
感動的な本である。台湾出身の論客、金美齢さんが、夫君、周英明氏との出会ひ、結婚生活、共に戦った台湾独立運動、子育て、そして、周英明氏の病気と他界を回顧した本である。−−その中には、金美齢さん自身について、私などは今まで知らなかった事も述べられて居る。
この本を読んで思ふ事は、人は、政治や社会の事柄について発言する前に、良き家庭人でなければならないと言ふ事である。家族こそは、人間の生活の原点であり、家族を愛し、家族の為に涙を流せない者が、民族や国家を、ましてや世界の為に、何を語れるか、何を為し得るかは、疑問だと言はざるを得ない。−−親子の愛と別離を描いた『リゴレット』を深く愛する金美齢さんが、台湾を、日本を憂ひ、発言を続けるのは、当然なのである。
(西岡昌紀・内科医)