本書は、夫婦で、1回目は南イタリアを、2回目には北イタリアをそれぞれパックツアーで旅行したときの体験を書いたものであるが、各地の名所旧跡の紹介にとどまらず、その土地にまつわる歴史や薀蓄が豊富で楽しい。イタリアに行ったことのない私は、ガイドブックや地図を広げながら読んだ。本書には、例えば、イシクーサという町は、アルキメデスが浴槽からあふれる湯を見て「浮力」の原理を発見したのがここであり、ここの石切り場は「ディオニシオスの耳」と名付けられているが、このディオニシオスは『走れメロス』に登場する暴君である、というようなガイドブックには載っていない話も満載である。名所旧跡を訪問した際にも、単なる紹介ではなく正直な感想が面白い。ときおり、ツアーのバスの運転手がどうした、ガイドはこんなに親切だった、トイレがあまりなくて困った、などの話や、夕食が付いていない晩はスーパーでチーズ、トマト、オリーブオイル、そしてワインを買ってきてホテルの部屋で食べた話というなど、イタリアへの旅行を計画している人にはいろいろ参考になる話が載っている。著者は予習をしないで旅行をするという方針であるそうだが、私は予習をしてから旅行に行くタイプである。そのためには、とても有益な本であった。