一番最初に蒸気機関の発明者と言われるワットの話が出てきます。蒸気機関の発明者がワットの以前に4人いるのですが、ワットが世間では最も有名です。ワットの功績が有名なのは、彼の作った蒸気機関が最も効率的であったためです。太陽光発電もまた効率化の歴史であり、一貫して右肩上がりに効率化しています。
太陽光発電の歴史を丁寧に通史しています。意外なところに意外な名前も出てきます。例えば放射線の本には必ず出てくるフランスの物理学者ベクレル。光による起電力の最初の発見者だそうです。
太陽光発電パネルの開発は、半導体の開発の歴史と絶えず平行して、互いに影響を与えながら進展していったことがよくわかりました。ベル研究所で太陽電池セルが発明されたのはトランジスタの開発中の偶然によるものだったらしい。70年代から80年代になると、今度はTFT方式のLCDに、アモルファスシリコン太陽電池の原理が応用されます。いろんな技術の複合が技術革新の種になっていて、面白い。
第5章のサンシャイン計画の成り立ちと現在までの開発状況の記述は、多分貴重だと思います。テレビ番組、記事などで見かけるサンシャイン計画についての多くの人の印象は、オイルショック時に国が再生可能エネルギーの研究の為に立ち上げたものということと、太陽熱発電に莫大な予算を投じたが失敗し、現在はプロジェクト自体が存在しない、といったようなものだと思います。太陽電池の研究者である筆者の説明によると、サンシャイン計画の立案はオイルショック前だそうです。また研究対象も太陽熱発電だけではなく、太陽エネルギー全般+クリーンエネルギーだったようです。本書では、太陽光発電での研究しか書かれていませんが、プロジェクト自体が失敗だったというわけでもないようで、例えば初期サンシャイン計画の目標だったモジュール効率10%という目標は90年代に達成しています。モジュール効率10%というのは、一般家庭の南面の屋根に太陽電池パネルを設置した場合、1日の消費電力をまかなえる性能がモジュール効率10%だそうです。びっくりするのは国の予算を使っているのにその予算が安いこと(著者は、逆にその数字を「とても高額」という言葉で表にして載せています)。平均すると毎年50億から60億くらいでしょうか。民間の全ての投資金額はこれの2〜4倍と書かれています。僕個人は国の予算はこれの最低でも10倍くらいの毎年数百億円ではないかと考えていました。サンシャイン計画は名称を変えて現在もプロジェクトは継続されています。
最終章で提唱者自らが「ジェネシス計画」を解説しています。簡単に言えば、世界中の太陽電池パネルを超伝導ケーブルで接続し、24時間絶え間なく太陽光エネルギーを変換するというコンセプトです。太陽光発電はエネルギー回収年数がとても速いらしい(2年でパネル生産に必要なエネルギー以上を太陽光から変換できる)。自己増殖能力の高さが太陽光発電の特徴です。また、世間では太陽光発電は効率が悪く面積を消費してしまうという評判ですが、著者はあまり面積を消費しないと書いています。全世界の全エネルギー消費量(電気+その他のエネルギー)を賄うには、モジュール効率10%換算で全地球上の砂漠の4%(=東京から広島くらいの広さ)だそうです。現在の最新のモジュール効率20%くらいだと、その半分くらいなのでしょうか?(ただし、エネルギー消費量の方も増えている)。
非常に詳細で良い本でした。歴史がよくわかります。逆に一般読者にとっては、記述されている分野が広範でやや大変でした。