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太陽を曳く馬〈上〉
 
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太陽を曳く馬〈上〉 [単行本]

高村 薫
5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (9件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

商品の説明

第61回(2009年) 讀賣文学賞小説賞受賞

内容(「BOOK」データベースより)

福澤彰之の息子・秋道は画家になり、赤い色面一つに行き着いて人を殺した。一方、一人の僧侶が謎の死を遂げ、合田雄一郎は21世紀の理由なき生死の淵に立つ。―人はなぜ描き、なぜ殺すのか。9.11の夜、合田雄一郎の彷徨が始まる。

登録情報

  • 単行本: 403ページ
  • 出版社: 新潮社 (2009/07)
  • ISBN-10: 4103784067
  • ISBN-13: 978-4103784067
  • 発売日: 2009/07
  • 商品の寸法: 19.4 x 13 x 3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (9件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 43,207位 (本のベストセラーを見る)
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35 人中、33人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
一般的な人間には理解しがたい対象、即ち現代芸術(抽象画)・動機不明の殺人・宗教に対して、どのように向き合うのかというテーマが真ん中に据えられています。これらの対象に合田雄一郎の眼を通じて深く、そう、沈み込むほどに深く入り込んでいくのですが、上巻の主要人物・福澤秋道の芸術と殺人、下巻の末永青年の死を契機に言葉が尽くされる宗教論(特に、オウムと古代インド宗教、禅宗との対比と本質論)に、入り込むというよりは埋め尽くされてしまう感覚が体を離れません。合田雄一郎も40を過ぎ、過去の作品に見られた表出する情熱は影を潜め、警察官という仕事や離婚した相手とその兄に対する考え方に変化が見られ、ただでさえ孤独であった彼が、殺人を犯した秋道に対しての父・福澤彰閑の何通にもわたる手紙を読む、あるいは執拗とさえ思えるほど宗教に対しての、いわば一見しても、あるいはそれ以上によく見ても理解しがたいものに対して「なぜ」という問いを繰り返しながら近づいていく姿は、決して華やかでもなく、恵まれたというわけでもない、要するに一般的な意味で言う幸せではない彼自身の人生に対する「なぜ」という思いと重なって、腹の底からの共感を感じました。彼は求めれば求めるほど、問い続ければ問い続けるほど孤独の影を濃くしていくようです。しかし、秋道に宛てた彰閑の最後の手紙には、息子に寄せる父の思いが感じ取られ、その思いに合田雄一郎も思いを寄せる様子が想像出来て救われます。この小説は、上下巻を通して、「分かる」とか「意味が通じる」といったいわば幸福な関係が断たれたものに対する接近を描いたものであり、一般的な「意味」からの自由を求めた者たちに対するレクイエムでもあると思います。日本では珍しい形而上学小説であるのと同時に、理解しがたいものが本当に我々の間近で頻発する現代への高村薫自身の向き合い方を表明した作品です。そして、立ち尽くしては内省し、問い続けては立ちすくみながら、今までとは違う何かを手にしたであろう合田雄一郎がこれから何処へ行くのか、次回作が待ち遠しくなる、本当に素晴らしい作品です。
このレビューは参考になりましたか?
82 人中、74人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 倭寇
形式:単行本|Amazonが確認した購入
4年ぶりの長編、上下巻、新潮社、オウム事件、宗教、芸術、そして社会問題にひるまず発言する作者、
という共通項を持つ「1Q84」が大ヒットを飛ばす中で刊行された新作ですが、二つの作品を続けて読み終えて、もともとある両者の違い以上に大きく異なる印象を持ちました。
いつまでも若者の立場にあろうとするものと、生きて老いることを引き受けたもの、という。

12年ぶりの合田雄一郎は世渡りを意識し、若い部下に舌打ちし、一言でいえば「おっさん」化して、笑いを誘います。
笑っていいんだよね?と戸惑い、文章そのものも昔よりはるかに読みやすくなっているため、自分は今までずいぶん誤解していたのかもと思ったりしました。
でも、合田の本質は変わっていませんでしたが。
特質や欠点や未熟さを抱えたまま、人は老い、同じ位置に立っていても周りの変化によって立場が変わってくる。
かっこ悪くなった合田には今までにない共感を覚えました。

しかし、そんな合田の姿をかき消すほど強い印象を残したのは、下巻の最後の最後。
福澤彰之が獄中の息子秋道にあてた数通の手紙と、その中に登場する西瓜をぶら下げた老人の姿でした。
どれほど知識を学び、修行しても、あるいは痴呆になっても、なお消えることのない子供への思い。
その切なさと温かさは、老いて見苦しく生きる現実を引き受けたものにだけ伝わります。
その前には、それまで芸術や宗教をめぐって膨大に語られた言葉すべてが薄っぺらく消えていきます。
その爽快さと感動を味わうためにも、延々続く芸術論とその数倍の量がある宗教論、流し読みでいいですから飛ばさずに、と言いたいですね。

一応星は4つ付けましたが、古くからの読者なら星5つの価値があろうかと思います。
このレビューは参考になりましたか?
18 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
芸術論、宗教論と難しいことが展開されそうな書評に惑わされず、ぜひ読んで欲しい作品です。
高村作品としてはかなり平易な文章です。時に砕けすぎて、これまでの高村節に慣れていた人はかえって戸惑うほどでしょう。
芸術にしても宗教にしても、生きた人間が繰り出す会話、セリフで構成されているので活き活きしています。動機なき殺人、9・11、そういったことがらもよく知る合田の視線から語られるのでいわずもがな。
彼女らしく、ささいな脇役に見える人物にまで人格がしっかり描かれています。一見没個性の現代人を象徴するかのような若者でさえ。
問題提起を多く内包しつつも、言葉で分かり合うことを重視するがゆえわかりやすい文章で、かつ高村氏らしい魅力的な人物描写なのですから、読まないのはもったいない。

確かに、一読で理解できる物語ではない。だからこそ、何度も繰り返し読む、発見する楽しさがある。
扱うテーマは重いのに、くすりと笑ってしまうようなコミカルな挿話もぽちぽちと。リズミカルに読み勧められます。

先述のとおり、問題提起はなされていますが、回答はありません。読者が各々導き出すのです。読者に考えさせ、参加させる引力があります。
合田の人間くささとともに作中に漂う彰之の掴みどころのない不思議に温かい眼差し、そんなものを感じながら現代社会について真摯に向き合う機会として読んでみてほしいです。

晴子情歌、新リア王は、根底に流れる一本の川のように脈々とつながりがあり、未読の方はまずこちらから順に読まれることをお薦めします。
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