結婚直前に一方的に婚約者から破談を告げられた明日羽。
徹底的に落ち込んだ彼女に変わり者の叔母、ロッカさんは「明日へのリスト」を書くよう助言する。
何気なくその言葉に従った明日羽の世界は自ら作成したリストの存在によって少しづつ扉を開き始めて行くのですが・・・。
一人の落ち込んだ女性が自分の立ち位置を見直しながら少しづつ前に進んで行く姿を描いた実に「シンプルなお話」。
しかし設定が地味な分、作者のスタイルと書きたいテーマの様なものがストレートに打ち出されているようで大変興味深く読めました。
本書は結局のところヒロイン明日羽が大きな挫折をきっかけに仕事や人生を見つめ直す姿を描いただけの物語とも言えます。
女友達の幼馴染の京(でも♂)や同僚の郁ちゃん、美貌のエスティシャン桜井恵、
それともちろん掴み所の無い叔母ロッカ(六花)までちゃんと魅力的なキャラを揃えながらも彼等のエピソードはばっさりと省かれています。
この「脇役たち」にもちゃんと幾多のドラマがあることは伝わってくるのだが敢えてそれを描かない辺りは中々小憎らしい(?)贅沢な物語なのだ。
つづられているのは明日羽の日々の悶々だったり自問自答する姿だったりするわけで、普通ならうんざりしそうなもの。
しかし彼女の迷いや微妙な揺れのようなものが徹底的に「リアル」に描写されることで読んでいる内に嫌でも我が身とシンクロしてしまいます。
加えて読み手の心をぐっと掴んで離さないのは、やはり作者らしい言葉の選択やビビッドな心情描写の巧さによるものだと感じました。
それがユーモアを交えつつ個性的・魅力的な登場人物たちとの交流を通じて描かれる訳で読みだすと意外なほど引き込まれます。
人は自分の姿を自分の目で直接見ることはできません。そのために鏡があるわけです。
自分の心も実は自分自身ではとても見えにくいものなのかも知れません。だからこそ人には人が必要なのだ、きっと。
自分を作っているのは他者との繋がりなのだ。それこそがこの物語のテーマであった気がします。
とても魅力的な物語でした。