太平洋戦争に関する著作は多くある。しかし、このシリーズはNHK取材班が番組作成のためにその取材網を存分に活用して調査が行われていることに特色がある。特に海外での資料調査やインタビューは国内の既存の資料に頼りがちな著作には見られないNHKならではの強みが反映されている。番組には登場しなかった話題やその後に新たにわかった情報も一部盛り込まれている。
この終戦編に関しては、それまで公開されていなかった旧ソビエト政府の資料を調べ、対日交渉にあたったロシア側通訳のインタビューを行い、さらには旧ソ連軍が米軍の訓練を受けて最新のレーダ装置を装備したものを含め147隻もの艦艇を寄贈してもらったことなども関係者へのインタビューで明らかにする。
「日本は戦争中、外交が無かったのです。外交というものが機能しなかったのです。軍部を中心とした政治機構のせいで、外交機能は破壊されていたんだな。それなのに、最後になって外交で何とか事態を打開しろといわれてもね」という当時の駐ソ連元日本大使館員の発言は、無責任なようだが、ある意味真実だろう。
それにしても、鈴木首相の「スターリンという人は西郷隆盛に似たところがあるようだし、悪くはしないような感じがする」という発言には思わず読んでいてひっくり返りそうになった。
ドイツが負けてぼろぼろになって日本だけになった状況で、日露戦争やノモハン事件などを通じて長年宿敵の関係にあったソ連が次に何をやってくるかということが読めないことも驚きだったが、こともあろうにそのソ連に中途半端に和平の仲介をお願いする流れや、やりとりには、あきれてしまう以外になかった。
西郷隆盛に似ていると日本の首相に評されたソ連指導者に、日ソ不可侵条約を破棄され、宣戦を布告され、そして武力で奪われてしまった北方領土が、再び日本に戻ってくる兆しはない。まだ戦後は終わったとはいえない。