軍事史に関してある程度の知識を持っている人間には、やや食い足りない…それがこのシリーズだが、この本に関しては、読んだとき(10年以上前でハードカバーだったが)には新鮮だった。
第2次世界大戦でレイテというと、どうしても同地をめぐって繰り広げられた、日米の激戦に目が行きがちだ。そう思って、この本を捲ってみれば、良い意味で期待が裏切られた。
そこに描かれていたのは、日本の占領地行政の失敗の分析であり、フィリピンにおけるマッカーサーの米国資本主義のエージェントとしての役割であり、日米のフィリピンにおける宣伝戦の優劣であり……。
何故、日本軍が1944年のフィリピンを巡る戦いにおいて決定的な敗北を被らなければならなかったのか、その政治的な背景について、徹底的にメスを入れていたためである。自分は学生時代、ビルマ、インドネシアの政治史を齧ったことがあり、それらの国々における日本の占領統治の失敗などについても学んだが、それとの比較ができたという点でも有益だった。星一つ原点の理由は、このシリーズ全体を通じて、日本軍批判がやや情緒的に流されているきらいがあり、本書もそれを免れていないことから。
しかし本書はシリーズ中、もっとも視点が優れている。とかく軍事というと戦闘だとか作戦だとか兵器だとか、そんな所に目が行きがちだが、政治・政策の延長である。政治・政策面で拙劣であれば、負けるしかない。あらためて、そのことに気づかせてくれたという点で、このシリーズでは最高の評価を本書には下したい。