極めて初歩的な事実誤認が多くあり、また彗星艦爆批判として一搭乗員の手記を引用してよしとするあたり、資料の用い方にも恣意的なものを感じます。また第一次世界大戦の専門家を標榜する筆者にしては、ワシントン・ロンドン条約の理解は不正確なことも引っかかります。
本書は真珠湾作戦とソロモン海域での戦闘を極めて重視していますが、一方で南方攻略戦や海上護衛戦には一言もふれていません。
海軍を主題とした太平洋戦争論としては、不足が多い内容と言えるでしょう。
またソロモン戦域での一連の空海戦に関しても、十分な理解がなく、日米機動部隊が1942〜43年の死闘で消耗した戦力の回復にあてていた時期について、全く無為に過ごしていたかのような記述には首をかしげたくなります。
筆者のマクロな主張は、海軍善玉論批判であり、官僚制批判と思われますが、その主張に説得力を持たせるならミクロな事実関係の検証にも配慮するべきでしょう。