太平洋戦争を色々な切り口から考察したコンパクトな本で、類書は多いが、本書はその中でも出色のものと言える。
これまでの研究や史料を要領よく取捨選択して、非常にすぐれたサマリー(まとめ)となっている。
全部で30のトピックを採り上げているが、私が惹きつけられたのは、やはり戦局が不利に傾いたころから、敗戦に至るまでの後半のエピソードである。組織でも個人でも状況的に追いつめられると、醜さも美しさも際立って発露するということがよくわかる。しかし、やはりやりきれない思いになるエピソードが多い。以下にいくつか挙げてみたい。
「アイタペ作戦の不可解な決断」
東部ニューギニアで、米軍の戦線の後方に取り残され、味方からの補給も望めず、かといって、敵を突破するほどの戦力もない、孤立した部隊・第18軍。軍司令官の決断は、玉砕命令でもなく、もちろん降伏でもなく、「適当に戦ってから、退いてジャングルで自給自足せよ」だった。なぜこういうことになったのか?
「関大尉の体当たりは不発」
特攻第一号の敷島隊指揮官として有名な関大尉。彼の零戦はこれまで護衛空母を撃沈したと信じられていたが、実際は彼の機の爆弾は不発で、小火災を起こしただけだったという。何ともやりきれない話。
「謎多き宇垣特攻の真実さがし」
玉音放送の日、宇垣中将が部下とともに特攻出撃に飛び立ち、帰還しなかったエピソード。通常このような場合は、将官自ら出撃したりせず、自決することが多い。宇垣中将や随伴した部下たちの心性とはいかなものだったのか。部下を道連れにしたとして批判されることが多いこの件に対して、著者はこう述べる。「いきなり"日本降伏"がやってきて、長官が特攻すると言いだしたとき、部下として『勝手に行ってください』と突き放せるものだったかどうか」考えさせられる一件である。