「浅間丸」は,昭和初期に建造され,昭和19年10月に東シナ海で撃沈された大型客船で,本書は,その十数年の生涯をつづった貴重な記録です。本書は,香港沖での「浅間丸」の座礁事故を始めとして,この船が遭遇した数々の出来事を紹介していきます。文章は具体的かつ客観的ですが,行間に,筆者の「浅間丸」に対する哀惜の情と多くの無辜の民間船を犠牲にした戦争への憤りが感じられ,情報量が多いだけでなく,とても読みごたえがあります。「浅間丸」だけでなく,大戦により非業の死を遂げた同型船や全ての民間船舶に対するレクイエムのように思えます。中公文庫ですが,冒頭のカラー頁に船外・船内の写真や絵が掲載されており,本文中にも写真・図面等が結構挿入されています。本文で約340頁。歴史好きな方,船好きな方には是非お勧めです。