さながら花登筐が描く船場商人の世界だが、主人公の丁稚は誰あろう松下幸之助。本書の主人公である。和歌山生まれの幸之助が大阪の火鉢屋に奉公に出されたのは10歳。ベソかきで寝小便タレの幸之助は月10銭の給金を得る子守りから身を立てる。自転車屋に移っては試行錯誤しながらも小僧として商談をまとめていった。そんな幸之助が電気に目覚めたきっかけは大阪市内を走る“チンチン電車”の出現だ。憧れの大阪電燈への入社を果たした幸之助は、16歳で「屋内配線工事担当者」に抜擢され、年上の見習工を従えて仕事をするようになる。鳴り物入りで明治45年に開業した大阪新世界・通天閣の電気工事を担当したのも幸之助だ。腕の良さを買われ最年少で破格の昇給・昇進を果たすものの飽き足らず、「改良ソケット」をひっさげて22歳で独立。そして松下電気器具製作所の設立につながっていく。
著者が「あとがき」で述べているように松下幸之助と松下電器に関しては多くの記録が残されているし、松下幸之助自身も『わが半生の記録 私の行き方 考え方』(PHP文庫)をつづっている。それらが本書のベースであり、小説として大胆なフィクションを盛り込んでいるわけでもない。しかし本書の特徴は時代背景の書き込みと、人間の心情描写にある。明治、大正、昭和初期という大きなうねりの中で生き抜いてきた労働者たちの息づかいが、本人の著作よりもビビッドに描かれている。そして産業史、労働史としても読めるところに歴史小説家たる著者の手腕が生きている。(松浦恭子) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
「経営の神様」と呼ばれ、その生涯を描いた本も数多い幸之助だが、少年期・青年期のエピソードはあまり詳しく知られていない。自転車競争の選手になってレースに熱中したり、セメント会社で肉体労働に従事したりする若き幸之助の姿は、どこにでもある青春群像そのものである。そんな彼が、並はずれた強運と時代を見抜く天賦の才で、成功をたぐりよせていく歩みをさわやかに描き上げたのが本作だ。
同じ和歌山出身であり、明治・大正・昭和を舞台に多くの作品を発表してきた著者は、練達の筆で松下幸之助の青春を時代のなかに鮮やかに浮かび上がらせた。まったく新しい視点で幸之助像に迫った傑作小説。
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
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最も参考になったカスタマーレビュー
5つ星のうち 1.0
最高の題材がありながら…残念。,
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レビュー対象商品: 天馬の歌 松下幸之助 (新潮文庫) (文庫)
私は松下幸之助さんの大ファンなので書店で見つけて即購入したのですが…。残念な感じです。他の本と比べると歴史的な背景などに詳しいですが…そのせいで退屈な感じになってしまっている。加えて、有名な逸話の網羅率にも疑問が残ってしまいます。 「松下幸之助」という最高の題材がありながら「この程度かぁ…」と。
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