圧倒的に面白かった.その点は文句のつけようもない.ただ私には一つだけ疑問が残った.それは天孫族が,その代々の名前に象徴されるようなすぐれた稲作技術を持って渡来し,まず日向を,さらには東征して大和を,征服・統治した,という著者の設定についてである.すでに弥生時代も長期にわたり,天孫族の稲作技術がそれまでの日本各地の種族に対し,それほど圧倒的な勢力の差を生むほどに,勝れたものでありえたであろうか.何処へ行っても結局最後は征服してしまうという,天孫族のサクセスストーリーは,鉄器の使用,という全く違った技術を有していたから,というのは多くの人が語っている.このような観点が全く欠落している.もしこのような視点を持って旅行をされていたら,また別な遺跡や伝承についても考察されていたであろうに,と思われ,いささか残念だ.