ナショナリストたるを自任する著者による、近代人権思想をもとに「制度として」の天皇制を全否定した一冊。
本書の議論の焦点はただ一点。近代人権思想の「法の下の平等」と、憲法の下で制度として、世襲での、天皇という存在を定めるという事とは相いれない、と著者はいう。
本書において、著者は左翼を「卑怯」と一刀両断し、右翼や保守については現在迷走していると評しつつ、日本史における天皇という存在の変遷と、立憲君主制下の制度としての天皇を論じます。その筆致は、いつものように明快かつ攻撃的。議論の基礎となる「知られていないことを書く」という著者の意図は、はたされていると思われます。
それにしても、終章の一節「知識人の処世術」には大笑い。ちょっと引用します。「天皇制については、何となく認め、しかし強化や「君が代」の強制には反対し、雅子妃については病気を懸念すること。」「九条擁護の立場をとってみせ、非現実的だという批判に対しては、確かにそうだが素晴らしい思想だと言ってごまかし」とか。そして、著者は「左翼の天皇陛下」といい「もはや黙って見守るしかない」と締めくくります。
この本を読んで怒るのは右翼たるロイヤリスト(皇室崇敬者、著者の定義による)やナショナリスト(愛国者)ではなく、左翼だろうなあ。
現在(平成二四年一月)時点においても初版本が流通しており、本文には細かな記述ミスがあります。これについては、著者本人のブログに正誤の一覧が載っています。