まず終戦の詔書をじっくりと読ませ、天皇の責任を問うている本書は、日本でも
このような本を出版する段階に至ったかと驚かざるを得ない内容を持っている。
ただし、様々な事象に対して、天皇のみに責任があるという論旨の解説は、
一部では史実にも反しているし、一部では真に責任があった人々の行為から
目をそらす結果をも生んでしまっているように思われる。
終戦の詔書ひとつにしても、まるで他人事のように戦争について書いてあるのに
驚く人が多いだろうが、これを作文したのは高級官僚と政治家であった。
天皇に対して(法律上のみならず一般的な)補弼の責任を負う彼らは、
天皇に責任があるとされると自分たちにも火の粉がかかる立場にあった。
従って、日本占領が終了した時点で天皇が日本国民に対するけじめとして
退位(天皇制の廃止ではない)したほうがいいのではないかという議論が
(昭和天皇周辺にいた人々からも)もち上がった際にも、消極的な態度を
取った人が多数だったのは当然であった。
とはいえ、昭和天皇の行動にも、冷静に読み解いていくと、首をかしげざるを
得ないような点が目に付くのも避けられない。
本書のこういった点に興味を持たれた方は、特に関心を持った点から他の本や
資料で詳しく調べてみると本書の不正確なところを含め、新たな発見があって
面白いと思う。
詔書そのものをじっくり見る視点と、問題提起の書としての意義を斟酌して、★★★。