時代は日露戦争の頃、福井のわりと裕福な家庭の次男坊として生まれた少年が主人公です。この人は実在しました。東京から来た軍用の料理人さんと知り合い、洋食をはじめて食べさせてもらう。その味のうまさが忘れられず、東京の上京し西洋料理の道をひたすら究めようと努力し、いくつかの名店で修行した後、ついにはフランスまで料理の修行に行ってしまう。この頃、学問のために留学する日本人はそれなりにいたけど、料理のために留学する日本人はこの主人公で二人目です。本場フランスでも始めは下っ端として入れてもらい、腕一本でどんどんのし上がっていき、やがてシェフと呼ばれるまでに上り詰めた。そんな折、天皇ために料理をつくらないかと大使館に言われ、フランスでの修行を終わらせ、宮内庁内での料理人としての人生が始まる。ついに日本の西洋料理のトップに立ったわけです。時代は代わり、昭和になり、戦争に負け、それでも尚天皇のために料理をつくり続けた男の一生を描いた長い作品です。長いわりには読みやすくって、一つの道をひたすら究めようとする職人魂を感じられる作品です。