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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「歴史文学」の傑作,
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レビュー対象商品: 天皇の世紀〈1〉 (文春文庫) (文庫)
『鞍馬天狗』で知られる大佛次郎氏の代表作で、遺作となった作品。残念なことに未完であるが、おそらく、夏目漱石の『明暗』と並んで、その中絶が惜しまれているのではないだろうか。内容を極めて簡単に書けば、幕末という時代を、天皇中心に描いている。ただ、なかなか手ごわい作品である。だいたい、幕末について歴史に多少でも興味があれば、本書に書かれていることの大筋は知っているだろう。ということは、さらに細部にかかわることなどを楽しめないと本書は、きわめて退屈極まりないものとなってしまうのである。それでも、いわゆる「歴史書」との差を分けるのは、著者の筆力。膨大な資料を巧みに利用するとともに、時代小説・大衆小説などを書いてきた経験を十二分に生かし、人物たちに生命を吹き込んでいる。 やや持ちあげすぎと思われるかも知れないが、『史記』や『歴史』(ヘロドトス)と同様「歴史文学」足り得ている作品であることは間違いない。自分以外の評価を引用するのは申し訳ないが、加藤周一氏が『日本文学史序説』のなかで、本書を「日本文学史上、これほどの規模と深さを兼ね備えるものは、おそらくは少ない」と書いている。それほどの傑作である。
7 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
時代が人を創るのか人が時代を拓くのかを読者に問いかける,
By 永遠のチャレンジャー (千葉県千葉市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 天皇の世紀 1 (単行本)
『天皇の世紀』は、幕末動乱を経て明治に至る近代日本の歩みを描く大佛次郎の構想が病で未完に終わるが、時代が人を創るのか人が時代を拓くのかという命題を今でも痛切に読者に突きつけて止まぬ歴史大作だ。登場人物は延べ千人を超える。初めて知る人名、事件、民心や時代風潮などが少なくない。正月のテレビ放送で幻の映像化作品を観たが実に見応えあるドラマだった。原作を読むと、先駆者たちが行きつ戻りつの振幅を繰り返した歴史に直面させられる。封建社会の閉塞感に抗って非業に倒れた者たちのなんと多いことか!時代の壁を突き崩した奔流となる前の細流の意義に気付く。 刹那的な言辞を弄して外国交渉にあたる江戸幕閣の因循姑息。列強と戦火を交える犠牲を払って遅れを自覚し、藩政改革を先導する人材を台頭させた薩摩藩と長州藩。大老暗殺など攘夷運動の旗手となった後に血で血を洗う暗澹たる党派抗争に陥った水戸藩の面妖さ。 天皇の政治価値を理解した大久保一蔵(利通)や胆力ある公卿岩倉具視らが推進した討幕運動の薄氷を踏むような内実を大佛次郎は斬って見せる。新政権の財務を担った三岡八郎が坂本龍馬と共鳴し合った共和立国の志向を、「五箇条のご誓文」草案の「庶民志を遂げ人心をして倦まざらしむるを欲す」の一条に籠めた思いに触れる。一方で、狂乱の廃仏毀釈と浦上切支丹弾圧事件の経緯に言及し、明治新政府の「基督教を以って(国家形成の)第一の障碍」と看做す排外主義ぶりをも解き明かす。 条約開港後の堺港に強制上陸したフランス水兵と港警護の土佐藩兵とが衝突した「堺事件」。発砲した土佐藩士20名の凄惨なハラキリに耐えられなくなった立会人フランス士官が切腹を中止させたとの巷説を耳にした時、革命時に国王夫妻を断頭台に送ったフランス人らしからぬ臆病さに眉を顰めた。 本書によれば、遅遅として進まぬ切腹の儀式で帰艦刻限に間に合わぬと悟った士官が死者同数の処断を見届けて退席したのが真相だという。歴史の実相は、白日の下に曝け出されると醜くもまた哀しく映る、新たな驚きに満ち満ちている。
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
司馬遼太郎とは違う幕末へのアプローチ,
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レビュー対象商品: 天皇の世紀〈1〉 (文春文庫) (文庫)
柳屋小さん治の寄席での宣伝にのって読み始めたが、(小さん治が予告したよりずっと早く)面白くなる。司馬遼太郎の幕末物に慣れていると資料の引用が多いのに戸惑うが、肉声がよく聞こえたような気がした。
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